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ARTにおける調節卵巣刺激はなぜ必要ですか?
 体外受精では多数の卵子を得ることが成功の秘訣です。自然周期やクロミフェン周期で体外受精を行う施設がありますが、低い妊娠率しか得られていません。世界的に見ても大部分の施設で調節卵巣過剰刺激が採用されています。
 
調節卵巣過剰刺激はどの様に行いますか?
 月経の始まる頃には、卵胞は直径5mm程度のものに成長しており、左右に数個認められます。自然周期ではこの中の1個が急速に成長し排卵日頃には20mm前後まで成長して排卵します。
   HMGと呼ばれる性腺刺激ホルモンを月経3日目頃から投与しますと、一度に多数の卵胞が成長し、10日前後注射して直18mm程になります。
   この時期に、最後の卵子の成熟を促すHCGと呼ばれるもう一つの性腺刺激ホルモンを注射します。HCG注射後の34~36時間後頃に破裂の直前の卵胞を穿刺し、成熟した卵子を採取します。
 
採卵前に排卵しないのですか?
 自然周期では、卵胞が成熟すると多量の卵胞ホルモンを分泌し、脳下垂体からLHが放出され排卵が引き起こされます。
   これを防ぐために、子宮内膜症の薬であるGnRHアナログ(例:スプレキュア)の薬を前周期の高温期の中頃から投与します。これがロングプロトコールです。
   卵胞の発育が不良な場合には、月経が始まった頃からこのホルモンを投与することもあり、これをショートプロトコールと呼びます。この方法ではやや卵胞の 質が低下しますが、排卵誘発作用が強いのでロングプロトコールで余り卵胞が育たなかった場合に用いられます。
 
どうしてロングプロトコールの方がショートプロトコールより良いのですか?
 GnRH アナログは初めは下垂体からのLHを放出し、その後抑制します。最初の脳下垂体からの LH ホルモンの大量放出をフレアーアップと言います。このLHが卵胞に悪影響を及ぼします。黄体期から始めるとこのフレアーアップが2日程しかありません。卵 胞期から始めると数日続きますから、卵胞の質が悪くなります。しかし、卵胞の成長が全くないより良いかもしれません。
 
HMGの投与法はみな同じですか?
 い つも同じ量を使用するのを固定投与法と呼びます。たとえば300単位連日投与などです。それに対し低用量から卵巣の反応性をみて徐々に増量する方法をス テップアップ法と呼び、最小有効量で卵胞発育を促し過剰の卵胞の発育を避けるために用いられます。例えば、75単位→112.5単位→150単位のように 増量していきます。
   高用量から減量する方法をステップダウン法と呼び、減量して新たな主席卵胞の発現を抑えるために用いられます。例えば225単位→150単位→75単位のように減量してゆきます。
 
採卵はどのようにして行うのですか?
  卵子は卵胞の中の卵胞液の中に存在しています。卵胞に針を刺し、数mlの卵胞液を吸引するとその中に直径0.1mm程の卵子が含まれています。最初の吸引 後に培養液を卵胞内に注入して再吸引すると採卵率が上がります。卵子はゼリー状の卵丘細胞で包まれており、直径2~3mmのフワフワした綿ホコリのような 塊となっています。プラスチックのシャーレに移して、顕微鏡で観察し、卵をきれいな培養液の中に移します。
 
採卵は痛くないのですか?
 一般に採卵は痛みを伴いますので、軽い麻酔が必要です。
   鎮痛剤+入眠剤等の静脈麻酔、麻薬+鎮静剤、吸入麻酔、時に硬膜外麻酔などが用いられます。腟壁にキシロカインを噴霧したり、局所麻酔をするところもあ ります。安全性を加味したり、外来採卵のため全く麻酔をしない施設もあります。当院では鎮痛剤+入眠剤等の静脈麻酔を用いてなるべく患者さんの疼痛軽減を するよう勤めています。
 
どの様な卵子が良いのですか?
  ゼリー状の卵丘細胞が十分に広がっているのが成熟卵の徴候です。小さくまとまっているいるのが未熟卵です。卵丘細胞が殆ど残存していないのを過熟卵と判定 します。卵子の周りの密に並んだ細胞のため、この段階では卵子の状態を良く見ることはできませんから、卵丘の状態で卵子の成熟度を判定します。
 
採卵数と妊娠の関係を教えて下さい。
 平均10個の卵が採れた場合には通常は下記のように5個程度の良い胚に成長してくれます。未熟卵は体外培養といって培養液の中で培養を続けると成熟し、受精するまでに育つものが有りますが、2割弱で数は多くありません。
 
平均10個の卵が採取
   ↓
平均80%の卵が受精(8個)
   ↓
60%が良好胚(5個)
   ↓
1~2個移植、残りの胚は凍結保存
   ↓

着床率は胚10個に1.3個
   ↓
採卵当り3人に1人が妊娠、20~25%に多胎
 
HCGはいつ投与しますか?
   一番大きな卵胞直径が16~18mmになった時に5,000~10,000単位を注射します。
   最後のHMGを投与した24~48時間後に投与します。血中のエストラジオールが14mm以上の卵胞1個当たり200pg/ml以上あればHCGの投与時期とする施設もあります。
 
HCGはどんな働きをしますか?
 十分に成熟した卵胞の中の卵子の減数分裂を促進します。
   採卵の時期には第一回目の減数分裂が終了し、第二減数分裂の中期(M・期)と呼ばれる状態になっています。この状態の時に精子が進入すると、それが刺激 になり減数分裂が完了します。またHCGは卵胞壁から卵子を剥がれやすくしますので、採卵前のHCGの投与は必須です。
 
体外受精が成功するためにどの様な条件が必要ですか?
体外受精は下記のような手順で進行しますので、調節卵巣刺激で10個前後の成熟卵胞を育てる
   ↓
十分に成熟した卵胞から卵子を採取する
   ↓
卵子を2~5個ずつ1ml程の培養液の入った容器に移し、さらに洗浄スイムアップ精子を10万個程添加する
   ↓
16~20時間後に前核期胚の有無を確認する
   ↓
48時間後に良好胚の形成を確認する
   ↓
1~2個の胚を子宮腔内へ移植し、着床するのを期待する。
 
どの様な胚が望ましいのですか?r>
 実体顕微鏡で受精卵の分割を確認します。2日目では4細胞に均等に分割した割球が見られるものが理想的です。小さな細胞片をフラグメントといいますが、割球が不均一で、フラグメントの多いものほど着床しません。
 
胚移植はどの様に行いますか?
 テフロンあるいはシリコンなどでできたETカテーテルを使用します。
   できるだけ良い胚をETカテーテルに少量の培養液あるいは血清(約20~30μ・)とともに吸引します。患者は載石位とし、腟内を洗浄します。子宮腔へ 静かに挿入し、子宮壁に突き当たる直前の所に胚を注入します。一般に、そのまま20分以上仰臥位にして安静にします。
 
胚移植後はどの様な処置が必要ですか?
 黄体機能維持のために、胚移植後黄体ホルモン(プロゲステロン)が投与されます。プロゲステロン量は1日25~50mgを筋注、あるいは100~400mgを腟坐薬により投与します。投与期間は移植後、約2週間程です。
   卵巣過剰症候群の発症の確率が低い場合には、採卵後2日目、4日目、6日目の3回ほどHCG2,000単位程を投与することもあります。
 
妊娠はいつ判定しますか?
 採卵後2週間目で尿中HCGを定量します。陽性になれば3~4日後にさらに検査を反復し、HCGが上昇していれば化学的妊娠が成立したとします。 
   僅かにHCGが上昇したからと言って、それは妊娠とは呼んでいません。あくまで化学的妊娠と定義し、妊娠成功例に加えるべきではありません。
   受精によって生じる胎児あるいは胎児附属物が確認されて、初めて臨床的妊娠といえます。すなわち妊娠と言うには少なくとも胎嚢の確認が必要です。
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